『限界集落の真実』 山下祐介著を読んで
 限界集落とは65歳以上の高齢者が住民の半数以上を超え、高齢化で共同生活が難しい集落のことを指しています。
 1980年代に提唱されて以来、各地で限界集落が消滅しつつあるとされてきましたが、全国の限界集落を歩いてきた著者は高齢化が原因で消滅した集落は未だ少ないと指摘しています。
 1960年代に230人もいた豊前市の「轟集落」は、現在38名にまで減少しています。しかも70歳以上の高齢者が70%以上という典型的な限界集落です。住民は先祖から受け継いだ棚田で米作りに励み、減反政策で米が作れなくなると耕作放棄でなく「ゆず」の栽培に取り組んで棚田を維持しています。棚田のもつ保水力や多様な生物の生息の場といった多面的機能、そして日本の農村の原風景ともいう四季折々の素晴らしい景観は彼らの努力なくしては存在し得ません。しかも、田植えを終えると鎮守の森で集落総出の豊作を祈念しての早苗宴を催し、秋の収穫を済ませると豊かな実りに感謝して神楽を奉納するといった農村の伝統的文化も守り続けています。この集落もやがては消滅してしまうのであろうかと慄然として不安と危惧の念を抱いていましたが、この本に出会ったことで大変元気づけられています。
 「限界集落に住む人は昭和1桁生まれの世代が中心で、高齢化は進んでも健康で集落を維持する意思が強く、またここに住み続けることに誇りさえ持っている。」「問題は、後を継ぐ世代がいないことである。限界集落が消滅するかどうかも世代継承にかかっている。」とする。世代継承として挙げるのが、都市に住む家族ら人のつながりを集落単位で再確認する「集落点検」。都会でも集落関係者が多いことを集落が自覚し、積極的に交流して里帰りを促す取り組みです。著者は東北などの事例をあげていますが、存続への意思と主体性を呼びさますこの取り組みは、地道ですが存続を諦めがちな集落の実態に合うように感じられます。また著者は、「周りの支えがあれば、それほど大きなコストをかけずに多くの集落が残っていく。」としています。
 「道の駅」豊前おこしかけでは、「棚田ツアー」や「彼岸花とそばの花めぐり」などで、集落の人達と都市に住む人達との交流のお世話をしたり、お米の販売促進やゆず製品の販路拡大などで安定した収入が得られるお手伝いをしています。集落の人達の生き残ろうとする意思を大切にして、こうした活動を継続していけば、集落の存在の道は開けてくるのだと思う次第です。