市営バスの終着場所となっている「轟の集会所」前の坂道を右に曲がって30mも登ると山の清水が湧き出る水汲み場がある。その向い側には轟の里グループの作業所があって、そこからほんの20mも歩くと、幾重にも重なった棚田に通じる入り口になっていて、ここに立つと「ゆず」の花の馥郁とした香りに包まれる。鹿・猪の乱入を防ぐ金属製の柵が張られている中には、白いゆずの花が満開で、蜜を求めてやってきたのであろうモンシロチョウや黒と青、黒と黄の鮮やかな色をしたアゲハチョウが飛び交っている。緑が一段と濃くなった周囲の山からは、甲高い野鳥の声に混じって、ウグイスの見事な谷渡りの鳴き声も聞こえてきます。何かしら地上の楽園にいるような雰囲気があります。
 本年はゆずの当り年となりそうです。この地域一帯のゆずを、「豊前棚田ゆず」として商標登録し、ブランド化に向けての取り組みをしてから5年になる。この間に「ゆずペースト」を開発し、全国各地の道の駅でも販売し、パリにも輸出したりしてきました。地域でも。「ゆずウィンナー」「ゆずパッチョ」「ゆずこしょうドレッシング」「ゆずのロールケーキ」や「ゆずのシフォンケーキ」などの商品が生産されるようになり、ゆずの生産や素材加工を通しての安定した収入と、雇用の場の確保によって、地位の活性化にいささかでも貢献しているのではないでしょうか。
 最近は、このゆずを使って地元の乾燥機のメーカーである加来野製作所がパウダーを開発しました。当道の駅でも販売していますが、さらにこのパウダーを生かした欧風の生ベーコン「パンチェッタ」をみやこハムさんが開発中です。地元企業のコラボレーションによる製品として注目されています。地元の1次産業と異業種との連携や波及効果を探りながら豊前しかない「地域らしさ」の演出に努めてゆきたいと考えています。
 棚田から轟地区を眺めると、田植えを終えた田圃は水をいっぱいに張ってあり白く輝いています。