遅くなりましたが、「轟の里棚田米」「ヒノヒカリ」ようやく発売となりました。

   一握の新米のぬくみ掌のぬくみ  吉田 北舟子

 新米を袋から出してお釜に入れるとき、何ともいえぬ香りが漂ってくるし、手に触れると秋の日射しを充分に浴びて熟れたからでしょうやわらかな温もりが伝わってきます。新米に出会ったという喜びに心が満たされます。

   新米の其一粒の光かな   高浜虚子

 お米が炊き上がって釜の蓋を開けると、むせ返るような湯気と甘やかな匂いに包まれる。純白の光沢をまとった新米。一粒の光が無上の喜びをもたらしてくれる瞬間です。
 農産物も、作った人の性格を表わすといいます。苗床づくり、籾蒔き、田植え、水の管理やまた天候の変化などに対応した様々な処置など、収穫までには手間暇のかかる大変な作業が必要です。また人智を尽しても人の手には負えない自然の差配もあって、神に豊作を祈願しての早苗饗の催しや、秋には豊かな稔りをもたらしてくれた感謝の意を表す神楽の奉納も行います。四季折々の美しい田園風景や日本の伝統的な農村文化は、米づくりを通して培われたもので、日本人の精神の骨格を形成する基盤となっているものです。
 この大切なお米が今年は市場の混乱に翻弄されています。消費者の米離れと、このところの豊作で25年度産が売れ残り、26年産の新米価格に影響しているようです。本年度は新農政元年とは名ばかりで、米価は40数年前の水準に逆戻りしたといわれています。当道の駅では、米の品質保持の為冷温保管が必要なのでJAと取引をしていますが、出荷が遅れたのも生産者との価格の折り合いが難しかったこともその要因のようです。当駅と取引のある農家の年令を調査してみると、20代30代40代は極めて少なくて大半が65歳以上の高齢者が占めています。子供はいるが儲からない農業は継がせたくない。継ぎたくないというのが現実です。数年前でも米農家の収入は時給換算で200円弱といわれていました。そこへ本年の市場の混乱とあっては、農家からは出荷するほど赤字がかさむという悲鳴が聞こえてきそうです。
 米づくりは国の根幹であり、世界を見渡しても国力の充実した国ほど食料自給率は高い。エネルギー換算で40%以下の日本にあっては、政治に民族の将来を展望した上で、もっとしっかりとした農業政策を打ち出してもらいたいと思うのは、私だけではないと思います。